夏が終わり、気づけば冷たい空気に包まれ始めた11月のある日。
娘と手をつないで登った千葉・鋸山の山頂は、低山とはいえ青く澄んだ空と遠くに広がる広大な海を一望でき、息をのむような絶景でした。けれど、登山途中や山頂で娘の手が冷たくなって「パパ、さむい〜」と涙ぐんだ顔を見るたびに、僕は心の中で「服装って本当に大事だな…」と痛感しました。
秋冬の山は空気が澄み、気温も低くなるため虫も少なく、人も少ない。春や夏のそれと比べると過酷な環境といえるかもしれません。それだけに“装備の差”が楽しさの差に直結してきます。
この記事では、初心者でも安心して秋冬の山を楽しめるよう、実体験を交えながら親子登山の服装・装備・安全ポイントを紹介します。寒さに負けない準備ができれば、秋冬の山は親子にとっても最高の遊び場となるはずです。
秋冬登山の基本:重ね着(レイヤリング)の考え方
登山の服装の基本は「重ね着(レイヤリング)」です。これはプロ登山家も実践する考え方で、
①ベースレイヤー(肌着) → ②ミドルレイヤー(中間着) → ③アウター(防風・防水ジャケット) の3層構造が基本です。
まだ、親子登山を始めたての頃、僕は「子どもは寒がりだから、とりあえず厚着をさせておけば安心」と思っていました。でも、登山中に汗をかいた娘が休憩中や山頂でご飯を食べているときに、急激に体が冷えてぐずってしまったことがあり、“汗冷え”の怖さを身をもって知りました。それ以来、僕の中で合言葉は「登る前は少し寒いくらいでちょうどいい」そして「できる限り汗をかく前(かいたらすぐ)に上着を脱ぐ」となりました。
「重ね着(レイヤリング)」については以下の記事でも紹介しておりますので、併せてご覧ください。
ベースレイヤーは「汗を素早く乾かす」役割。綿素材は乾きにくく冷えの原因になるため避けましょう。
おすすめは、モンベルのスーパーメリノウールや、finetrackのドライレイヤーなど。どちらも吸湿速乾性に優れ、秋冬でも汗冷えを防いでくれます。
ミドルレイヤーは「体温を保つ」層。軽くて保温性の高いフリースや中綿ジャケットが最適です。
アウターは「風・雨・雪を防ぐ」ための外殻。THE NORTH FACEやColumbiaなどの防風・防水ジャケットが定番です。
登山では「暑くなる前に脱ぐ・寒くなる前に着る」が鉄則です。
汗をかいた後に冷える汗冷え(※汗が蒸発せず体温を奪うこと)を防ぐため、こまめな調整が非常に大切です。
低山登山(標高500〜1000m)におすすめの服装と装備

秋の紅葉を手軽にかつ身近に楽しめる低山登山は、親子登山の最高の入口です。
ただし「低山=暖かい」と油断すると痛い目に遭います。
僕が初めて娘と登った鋸山(千葉県)は、登山開始の朝9時頃は手がかじかむほど寒かったのに、登り始めて30分後には汗でびっしょり。途中でフリースを脱がせたら今度は風で冷えてしまったようで、山頂で鼻をすすって泣く娘を見て反省しました。それ以来、“調整(脱着)しやすい服装”が(特に秋冬)登山の基本なのだと気づきました。
そんな私が「近場の山で秋の紅葉を見ながら親子登山」の基本装備を紹介します。
低山でも朝晩は冷えるので、寒暖差を意識した重ね着がポイントです。
親の服装
- ベースレイヤー: 吸湿速乾性のある長袖インナー(例:モンベル・スーパーメリノウール)
- ミドルレイヤー: 軽量フリース(例:PatagoniaのR1シリーズ)
- アウター: 防風ソフトシェルジャケット(例:Columbiaのシルバリッジシリーズ)
- パンツ: ストレッチ性のある登山パンツ+保温タイツ
- 靴: ミドルカットのトレッキングシューズ(例:KEEN TARGHEEシリーズ)
- 小物: 帽子・手袋・ネックウォーマーは防風素材を選ぶ
気温10℃を下回る朝の登山口では防寒着が必要ですが、登るうちに体が温まります。
温度変化に対応できるよう「脱ぎやすさ」「携帯しやすさ」を意識して選びましょう。
子どもの服装
基本は「大人より一枚多く」。子どもは汗をかきやすく、冷えやすいので特に注意が必要です。
おすすめは以下の構成です。
- ベースレイヤー: 速乾インナー(例:モンベル ジオライン キッズ)
- ミドルレイヤー: 軽量フリース
- アウター: 防風・撥水性のあるジャケット(例:Columbia Kids)
- パンツ: 裏起毛のストレッチパンツ
- 靴: 防水スニーカー or キッズ用トレッキングシューズ
さらに帽子・手袋・ネックウォーマーは「風で飛ばない・落とさない」形が安心です。
また、登山中に体が冷えてきたらすぐ着せること。親が感じる「ちょっと肌寒い」は、子どもにとって「かなり寒い」となる点に注意が必要です。
持ち物チェックリスト(低山)
| アイテム | 理由・ポイント |
|---|---|
| レインウェア上下 | 防風・防寒にも使える万能装備 |
| 行動食(おやつ) | 子どものやる気を支える魔法。ラムネ・ドライフルーツなど |
| 飲み物(保温ボトル) | 温かいお茶・スープは必須 |
| モバイルバッテリー | スマホGPS・撮影で電池消費が激しい |
| 救急セット | 絆創膏・消毒・冷却シートを最低限 |
| タオル・ウェットティッシュ | 手洗いや汗拭きに頻出 |
このリストは低山登山ならほぼ共通。あとは気温や天候に応じてカイロを足すなど、柔軟に調整しましょう。
また、荷物は「ザック一つに収まる量」にすることも大切です。どうしても登山始めたての頃は要領もわからず不安が先行してしまい、ついあれもこれもと詰め込んでしまいがちですが、荷物が増えすぎてしまうとその重さで体力が必要以上に奪われてしまったり、必要なものが必要な時にすぐ取り出せなかったりと、結果的に身体的、精神的苦痛が高くなってしまいますので、まずは上記リストに記載されたものを準備していただき、実際に経験を積んでいく中で「追加で必要なもの」「不要だったもの」を整理して、『我が家の持ち物リスト』を作り上げていくことをお勧めいたします。
「持ち物リスト」につきましては、以下の記事でも紹介しておりますので、こちらも併せてご覧ください。
中級山登山(標高1000〜2000m)に挑戦する場合

低山に慣れてきたら、次は少し標高の高い山へチャレンジしてみましょう。
中級山では、気温・風・天候の変化がよりシビアになります。標高が100m上がるごとに気温は約0.6℃下がるため、標高1500mなら平地より約9℃も低くなる計算です。
つまり「街では秋」でも、山頂は「冬」。そのつもりで服装を整えるのが鉄則です。
僕が親子で金時山に登ったとき、山頂でのお昼ご飯中に風が急に強まりました。汗でシャツが濡れていた娘は「寒い!もう帰りたい!」と泣き出してしまったため、急いで予備のシャツと上着を着せました。基本的なところではありますが、着替えを持っていて本当に助かりました。“着替えって本当に大事”です。
親の服装
- ベースレイヤー: 保温性の高いウール系素材(例:モンベル・スーパーメリノウール EXP)
- ミドルレイヤー: 厚手フリースや軽量ダウンベスト(例:Patagonia ナノパフ)
- アウター: 防水透湿ジャケット(GORE-TEXなど)
- パンツ: 防風・防水性のある登山パンツ+保温タイツ
- 靴: 防水・防滑のハイカット登山靴(例:Salomon X Ultra 4 MID GTX)
- 小物: スパッツ(ゲイター)で雪や泥の侵入を防止
中級山では、山頂付近では木々等の風を遮ってくれるものが少なく、風の強い日には常に風にさらされてしまうため、体感温度が一気に下がります。そのため防風性能の高いアウターを1枚持っているだけで安心感が段違いとなりますので、天気予報に左右されずに必ず1枚はザックに忍ばせておくようにしましょう。
子どもの服装
大人より1段階上の防寒を意識してください。特に標高が上がると風が冷たく、休憩中はあっという間に冷えてしまいます。
- アウター: スキーウェア兼用でもOK(防水・防寒性重視)
- 手袋: 防水タイプ+予備1セット
- 靴: 防水性重視。雪が残る場所ならスノーブーツも◎
- カイロ: ポケットや背中に貼るタイプを複数用意
持ち物チェックリスト(中級山)
| アイテム | 理由・ポイント |
|---|---|
| ダウンジャケット | 休憩時の保温用に軽量タイプを常備 |
| ヘッドランプ | 日没が早い季節は必携 |
| 地図・コンパス | 圏外時の命綱。子どもと一緒に使い方を学ぶのも◎ |
| 予備手袋・帽子 | 濡れ・紛失対策 |
| カイロ | 貼るタイプと持つタイプの併用が便利 |
中級山では、低山に比べて“もしもの備え”がとても重要です。特に子どもと一緒に登るときには想定外の連続となりますので、普段大人同士で登山に行くとき以上に徹底した安全装備が必要になります。
必要最低限、下山が遅れて夕暮れになっても安心できるよう、ライト・保温具は必ず持って行きましょう。
「持ち物リスト」につきましては、以下の記事でも紹介しておりますので、こちらも併せてご覧ください。
ザック(リュック)の選び方:親と子ども、それぞれの役割に合わせて
登山では「何を持っていくのか」と同じくらい「どうやって持つか」も大切です。
親子登山では、親と子どもそれぞれのザックに役割を分けることで、荷物の管理もスムーズになります。
親のザック選び:安全と快適を背負う
親のザックは、家族全体の安全と快適を支える“母艦”のような存在と考えましょう。
自分と子どもの着替え、安全装備、救急セットなどをすべて背負う前提で選びます。
- 容量: 20〜30Lが目安(低山なら20L前後、中級山なら30L前後)
- 特徴: 背面パッド付きで通気性がよく、腰ベルト(ヒップベルト)で荷重を分散できるタイプが◎
- おすすめモデル: モンベル トレールパック25 / Deuter フューチュラシリーズ
- ポイント: 背負ったときに重心が「背中の真ん中」に来るよう調整しましょう。肩だけで背負うと疲労が倍増します。購入時に購入店舗のスタッフさんに調整方法等確認することをお勧めします。どんなに高性能なザックも背負い方を間違うと、全く性能を発揮できなくなりますので、正しい背負い方を必ず教わるようにしましょう。
また、荷物の詰め方も重要です。重いもの(飲み物・防寒着・救急セット)は背中側の下部に、軽いものや頻繁に出し入れするもの(タオル・お菓子など)は上部に配置しましょう。レインカバー付きモデルを選べば、急な雨でも安心です。
子どものザック選び:自分の荷物を持つ“登山デビュー”に
子ども用ザックは「自分の荷物を自分で持つ」練習として最適です。子ども用のザックを子どもと一緒に選んで購入することで、責任感と登山への参加意識が自然に育ちます。
- 容量: 8〜15L程度(年齢・体格による)
- 中身の目安: 飲み物・お菓子・タオル・小さなおもちゃ
- 特徴: 軽量で背中にフィットし、チェストベルト(胸ベルト)付きのものを選ぶと安定感がアップ
- おすすめモデル: モンベル リュック Kid’sパック10 / Columbia Youth Mini Pack
「おやつは自分のザックに入れていいよ」と伝えると、子どもも嬉しそうに準備します。ただし、荷物が重くなりすぎないよう注意が必要です。体重の10%以内が目安ですが、適宜様子を見ながら調整しましょう。
また、肩ベルトや背中の長さが体格に合っていないと歩きにくくなるため、購入時は実際に背負って「肩から腰まで自然にフィットするか」を確認しましょう。店舗のスタッフさんに確認すると安心です。
親子でおそろいデザインのザックにすると、写真映えも抜群です。“おそろい効果”で子どものテンションも上がります。
親子登山ならではの注意点と工夫

子どもと登山を楽しむコツは、ズバリ「ペース配分」と「モチベーション維持」です。
登山は大人の体力基準で進めると確実に失敗します。
- 子どものペースを最優先に:小まめに休憩を取り、「おやつ休憩」や「景色タイム」で楽しい流れを作りましょう。子どもがどんぐりや葉っぱを立ち止まって拾ったりしているときは、急かすことなく一緒に楽しみながら温かい目で見守ってあげましょう。頂上まで行くことを最優先にしないように注意しましょう。
- 厚着させすぎない:子どもは汗をかきやすいので、“汗冷え”対策が大切です。少し肌寒いくらいからスタートするのが◎ また、子どもは暑くても寒くても黙っていることが多いので、こまめに子どもに確認を取ったりしながら、上着の脱着について提案してあげるようにしましょう。
- 遊びを取り入れる:登山では大人でも途中で疲労などから飽きてしまい、モチベーションが下がってしまうことは珍しくありません。大人よりも体力がなく、飽きっぽい子どもならなおさらです。子どもの飽きを予防するために「木の実探し」や「虫探し」、「落ち葉ジャンプ」など、五感を使って自然を楽しむ遊びをしながら、疲れと飽きを忘れさせることが大切です。大人も一緒に楽しんでいると子どももより遊びに夢中になれますので、親が率先して楽しむように心がけると◎
- 親の余裕が全て 子どもは親の表情を見ています。焦らず笑顔でいることが大切です!コツとしては目標を段階別に複数用意しておくことで、子どもと一緒にゲーム感覚としても楽しめるのでお勧めです。例えば、①山頂まで〇kmの標識を見つける ②落ち葉を10枚拾う ④〇歩歩く ⑤山頂に到着する といった感じで定期的に達成感を子どもと親両方が味わえるように設定するとより効果的です。
そして大切なのは「無理をしない勇気」。
少しでも「嫌な予感」がしたら下山する。それが安全登山の基本であり、親としての最高の判断です。
関東でおすすめの秋冬親子登山スポット
- 千葉県:鋸山(のこぎりやま)
ロープウェイもあり、低山ながら絶景。頂上の「地獄のぞき」は子どもも大喜び。 - 神奈川県:大山(おおやま)
ケーブルカー+登山ルートが選べ、紅葉時期は圧巻。 - 埼玉県:日和田山
子連れ登山の定番。山頂からの眺めが素晴らしく、1時間程度で登頂可能。 - 山梨県:陣馬山
頂上が広く、芝生でピクニックもできる。冬でも日差しが暖かい日が多い。
我が家では鋸山が絶大な人気を誇っておりますが、上記のどの山も「安全装備+余裕ある計画」があれば、親子登山デビューに最適ですので、単純に家からの距離などで決めてしまってもいいかもしれません。
おすすめ装備&ブランドガイド
| カテゴリ | ブランド例 | 特徴 |
|---|---|---|
| ベースレイヤー | モンベル、finetrack | 吸湿速乾・軽量 |
| ミドルレイヤー | Patagonia、THE NORTH FACE | 保温・デザイン性 |
| アウター | Columbia、Marmot | 防風防水性◎ |
| 靴 | KEEN、Salomon | 防滑・歩行安定性 |
| キッズ用品 | mont-bell、Columbia Kids | 軽くて丈夫。 成長に合わせてサイズ調整しやすい。 |
まとめ:準備で8割決まる!秋冬登山は親子の絆時間に

登山の成功は「登る前」に決まります。天気・服装・体調、この3つを制すれば秋冬でも怖くありません。
子どもと一緒の登山は、ただの運動ではなく「自然と触れ合う教育の場」となります。
寒さを乗り越え、山頂でおにぎりを食べながら笑い合う時間は、何にも代えがたい経験です。
どうぞ、安全第一で、親子で秋冬の山を満喫してください。



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